小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「兄貴、来なかったよ」
あたしの目の動きに気づいた稔くんが、あたしの耳元で小さく言った。
ギャーギャー騒ぐみんなには、聞こえていないようだ。
「うん。いいの。
あたしが来ないでって言ったから」
「………」
「来られたら、あたし、確実に泣くもん」
あたしが眉を寄せて笑うと、稔くんは圭と似た仕草でハっと声をもらした。
「ありがとね、稔くん。
わざわざここまで来てくれて」
あたしが言うと、稔くんはただ肩をすくめた。
出航の時間が近づき、あたしは良ちゃんと船に乗り込む。
「またね~!!」
「戻ってる来る時は必ず連絡してね!!」
「2人でケンカしないでよ~!!」
あたし達はみんなに見送られ、大きく手を振った。
「圭、来なかったけどよかったの?」
船に乗り込む途中で、良ちゃんが真剣な声で言った。
「マジで、このまま福岡行ったら簡単に会えなくなるんだよ?」