小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
船の騒音に混じって、微かだけど名前を呼ばれたような気がした。
ハっとしてキョロキョロ辺りを見渡すと、海岸沿いの道路を自転車を飛ばして走っている圭がいた。
力いっぱい自転車をこぐ圭の前髪は、向かい風を受けてボサボサに立っている。
「け……圭っ!!」
あたしがデッキから少し身を乗り出し圭の名前を叫ぶと、隣の良ちゃんもあたしと同じように身を乗り出した。
「歌恋~っ!!!!」
圭が自転車のスピードを上げ、立ちながらペダルをこいでいる。
「け~い!!」
あたしも、船の騒音にかき消されないように出せるだけの声を絞り出した。
「歌恋!!
必ず、迎えに行くからな~!!」
「うん!!」
「絶対にっ、おまえらに追いついて、会いに行くからっ!!」
圭が自転車で港に入ってくる。
それとほぼ同時くらいに、船の速度も少しずつ上がっていった。