小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
お酒が入ると、お客さんのテンションは一気に上がり、注文もみんな思い思いに言ってくるので、取る方としてはかなり苦労した。
慣れてないうえにみんなにバラバラ言われたら、頭がパニックになる。
間違いがないか繰り返し確認する時も、誰も聞いてくれないし。
……ああ、もう、ヤダ!
「お疲れ~」
初日のバイトが終わりぐったりしてお店を出ると、先に裏口から出ていた武内くんが壁に寄り掛かってあたしを待っていてくれた。
「あ、武内くん。
待っててくれたんだ」
「赫が疲労困ぱいで出てくるんじゃないかと思ってさ。
はい、コーヒー」
あたしの手に、冷たい缶コーヒーを持たせた。
「ありがとう。
ああ~、冷たくて気持ちいい」
夜の風はまだまだ涼しかったけど、今まで走りまわってたおかげで体中が火照っていた。
缶コーヒーを頬に当て、熱を少しずつ下げていく。