小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「ああ……
いいよ、また今度で」
武内くんは口元に笑みを作り、『また明日な』と後ろ向きに手を振って歩いて行った。
「アイツに何を言われたの?」
武内くんの歩いて行く背中が見えなくなるまで見送りながら、良ちゃんが聞いてきた。
「わかんないの。
真剣だったけど、何か大事なことだったのかな」
ボソリと呟くと、良ちゃんはあたしの手に収まる缶を抜き取って、中身が入ってないことを確かめると公園の近くにあったゴミ箱に投げ入れた。
「バイト、どうだった?」
良ちゃんと肩を並べて、アパートへ向かう。
「緊張したけど、武内くんがいてくれたおかげで失敗もなくできたよ」
「“武内くん”ねぇ……」
良ちゃんは両手を頭の後ろで組むと、大きく息を吐きながら空を見上げた。
「なに?どうしたの?
そんなに武内くんのことが嫌い?」
眉を寄せて良ちゃんに聞く。
「うん。 最高に嫌い」
「どうして?
良ちゃんに何かしたわけでもないのに」