小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
突然、頬に冷たい何かがあたり、プツンと思考が切れた。
ビックリして振り返ると、武内くんがキンキンに冷えたビールジョッキをあたしの頬に当てていた。
ああ、そうか。
今はバイト中だった。
バイトの人手不足で厨房が回らなくなり、外は武内くんらベテランに任せてあたしは皿洗いにまわった。
考え事をしているヒマなんてないのに……
「ボーっとしてると、手ケガするよ」
「ご、ごめん。
集中しなきゃね」
あたしは、『よし!』と自分に気合を入れ、次々に皿を洗いあげていった。
「お疲れ」
閉店後、テーブルの後片付けをしていると、三角巾を外しながら武内くんが口角を上げた。
「お疲れ様。
今日も忙しかったね」
「まぁ、金曜日だしね」
そう言って、武内くんが肩をグルグル回す。