小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


それで圭との溝が出来てしまったなんて……


あたしは、女子更衣室で圭に電話をかけた。


圭の声を聞いて、安心したい。


それなのに……



『……電波の届かないところにいるか、電源が入っていない為……』


悲しい音声が流れてくるだけで、愛おしい声を聞くことは出来なかった。


パチンと携帯を2つに折り、制服から私服に着替える。


どんどん遠くなっていく圭。


今、何をしているんだろう。


誰といて、どんなことを考えているんだろう。


見ることのできない圭の生活に、不安が増していく。


メールや電話をしても、なかなか連絡のつかないあたしに嫌気がさした?


それとも、さっき武内くんが言っていたみたいに、近くにいる他の誰かを好きになった?


……圭。

あたしはただ、圭に会いたいだけなのに。



ジワリと浮かんでくる涙をこらえながらロッカーのカギを閉め、裏口から外に出た。


外の風は生ぬるくなっていて、夏はもう、すぐそこまで来ていた。




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