小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
突然、あたしの目の前から武内くんの気配がなくなり、すぐにドスっと鈍い音がした。
混乱して目を開けると、武内くんがアスファルトに倒れている。
倒れる武内くんに馬乗りになっているのは、今島に帰っているはずの良ちゃんだ。
「良ちゃん!」
2人に近づくと、下になる武内くんが痛そうに唸っていた。
良ちゃんは、痛さに顔を歪める武内くんの胸倉を掴み息を荒げている。
「おいっ!
おまえ、今歌恋に何しようとした!?」
良ちゃんの怒鳴る低い声が、夜中の静かな住宅街に、荒々しく響いた。
「良ちゃん、やめてっ!」
良ちゃんの腕を掴んで武内くんから引き剥がそうとしても、良ちゃんの力があまりにも強すぎてピクリともしない。
「いつか歌恋に手出すんじゃないかって警戒してたけど、やっぱり、俺のいない間を狙ってたか!」
“俺”……
良ちゃんが、初めて自分を俺と呼んだ。
それに、こんなに低い声で怒鳴る良ちゃんは今まで見たことがない。
本当に、良ちゃんなの……?