小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
こじんまりとした空港には、パラパラとしか人がいない。
福岡で毎日めまぐるしい日々を過ごしていたから、とてもゆっくり時間が流れているような気がする。
外に出ると、強い日差しに目眩がした。
アスファルトから上ってくる、焼けるほどの熱気。
潮風に肌をべたつかせながら、あたしは意を決してボストンバックを強く握りしめた。
空港前からバスに乗り、約5分。
一旦、懐かしい場所でバスを下りた。
今はもう誰も通っていない、母校。
正門は締め切られ、校庭の向こう側に寂しく佇む校舎。
それに、あたしの恋を見守ってくれた、ガジュマルの木。
卒業してまだ数カ月しか経っていないけれど、とても懐かしく感じた。
燦々と照りつける太陽の下、15人で制服のシャツを風になびかせながら走っている。
キャキャっと笑い声を上げ、額から流れる汗に横髪を濡らしながら。
普段クールな圭の顔にも笑顔が浮かび、良ちゃんは愛嬌をふりまきながらはしゃいでいて。
眩しすぎる思い出を誰もいない校庭に合成させると、一瞬だけあの頃のあたし達の笑い声が聞こえてきたような気がした。