小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
『歌恋』
あたしの名前を呼ぶ、圭の声も聞こえる。
フワフワの茶髪を潮風に靡かせ、伸びてきた前髪の奥で、二重の目を細めてあたしを見ている。
何もしなくても、彼の隣にいれた日々。
毎日毎日、どんなときでも、あたしの隣に圭はいた。
それが当たり前だった。
その当たり前が当たり前じゃなくなった時、ぽっかり心に穴が開いて抜けがら状態になってしまうのは、あたしの経験がまだまだ少ない証拠だ。
「………」
どうしよう……
ここまで来て、あたし、躊躇ってる。
圭に会うのが怖い。
圭との思い出がいっぱい詰まったこの島に帰ってきたら、余計に怖くなった。
「あれ? 歌恋ちゃん?」
不意に背後から女の人に名前を呼ばれ、あたしはビックリして勢いよく振り返る。
「やっぱり!」
「おばさん!!」