小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
あたしの名前を呼んだのは、良ちゃんのお母さんだった。
買い物袋を自転車のカゴに乗せ、自転車を引いて歩いていた。
「まぁまぁ、一段とキレイになっちゃって~」
自転車を支えながら、少しだけ外見の変わったあたしを頭からつま先まで見るおばさん。
「良久が歌恋ちゃんは少し遅れて帰ってくるって言ってたけど、今日だったんだね」
あたしの下げるボストンバックに目を向けて言った。
「はい。
家に帰る前に、ちょっと懐かしい風景を見たくなっちゃって」
そう言って静かな校舎に目を向ける。
「あっ!
そうそう。“懐かしい”で思い出したんだけど。
今帰ってきたばかりということは、まだ星砂の浜には行ってないよね?」
「……はい」
キョトンとしておばさんに答えると、おばさんは顎を引いてニヤけ
「キレイな虹が見れるから、行ってみなさい」
と、右手首をカクン折ったあとに口元に手を持って行き、フフフと意味深に笑った。
……キレイな虹?
こんなにいい天気なのに、虹が見れるの?
どういうこと?