小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


「何言ってるの? 自分で食べられるでしょ?」


「嫌だ。今日は風邪だから、歌恋が食べさせて」


良ちゃんは更に大きな口を開けて「早く」と言う。


「ハっ。ガキかよ。いい年こいて甘えるな」


クルリと圭を振り返ると、彼は本棚に寄り掛かり腕を組んでおもしろくなさそうに口の端をクイっと上げていた。


「手があるんだから、自分で食えよ」


圭が独り言のように口の中でこもらせながら言うと、良ちゃんはサッと自分の手を後ろに隠した。


「手ないから。はい、アーン」


良ちゃん、どうしたの?


風邪でおかしくなった?


いつもはそんなこと言わないでしょ?


まぁ、でも、風邪の時は誰かに甘えたくなる気持ち、少しわかるかも。




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