小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


海の仕事の都合上、今でも一緒にいられる時間は少ないみたいだけど、学生の頃から離れることに関して慣れている2人はとても上手に毎日を過ごしている。


数年前、圭との遠恋でボロボロになっていたあたしとは大違いだ。


「こんにちは~。
今日忙しい? ウチの子がまた風邪ひいちゃって~」


困った声で診療所に入って来たのは、小さな男の子の手を引くユリちゃん。


口にマスクをして、ダランと目を垂らすノゾムくんはとても辛そうだ。


「あらあら、ノゾムくん大丈夫?
すぐに診てあげるからね~」


あたしがノゾムくんの目線に合わせてしゃがみ込むと、ノゾムくんは不安げな表情で頷いた。


「あ、海とルナちゃんも来てたんだ」


ユリちゃんが、廊下で2人を見つけ表情を明るめる。


「うん。
今来たとこだった。それにしても、ユリちゃん最近ちょっと太った?」


ルナちゃんが、輪郭が少しふっくらしてきたユリちゃんに言った。


「ああ、うん。
2人目、できちゃって」


テヘっと笑うユリちゃん。


「本当にっ!?」


あたしとルナちゃんと海の声が聞こえる。


「うわ~!!
おめでとう!!」


自分のことのように喜ぶルナちゃん。


「ノゾムくん、お兄ちゃんになるんだ」


あたしがノゾムくんに言うと、彼は誇らしげに胸を張って頷いた。



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