小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


「ただいま~」


また聞きなれた声が、診療所の入り口から聞こえてくる。


あたしは立ちあがりながら入口に顔を向け、眉を寄せて笑う。


「ただいまって……
ここはあなたの家じゃないよ、良ちゃん」


大きなボストンバックをドスンと廊下におろし、当たり前のように、自分ちより先にここに帰ってきた良ちゃん。


今でも福岡で暮らしている良ちゃんは、たまにこうやって島に帰ってくるんだ。


福岡にまだ残っている理由は……

リサちゃんと付き合いだしたから。


「お~、みんな来てたんだ~」


良ちゃんが、診療所に集まるみんなに目を向ける。


どんどん賑やかになっていく診療所。


なかなか診察室に戻らないあたしにしびれを切らし、圭までもが廊下に出てきた。


ただでさえ狭い廊下が、みんなが集まり余計狭くなる。


「おまえら、ちょっと一気に集まり過ぎ」


困ったように言う圭だけど、どこかちょっと嬉しそうだった。




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