小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「兄ちゃん~、そろそろ昼休憩だろ?
飯食いに行こうぜ」
「ミノ~!!」
最後に診療所に入って来たのは、圭の弟の稔くんだった。
お父さんの会社でダイビングの講師として働く稔くんは、おじさんのようにまっ黒に日焼けしていてより男らしくなっている。
「ったく……」
次から次に集まってくる仲間に、圭が頭を抱える。
「おまえらが押し掛けてくるから、診察が進まないだろ。
昼飯はもう少し後だよ。先に食っとけ稔」
圭がため息混じりに言うと、周りの患者さん達から笑い声が上がった。
「ここは、いつも賑やかだから楽しいよね~」
お年寄り達が、口ぐちに言いあう。
それが、あたし達にとってはすごく嬉しかった。
ケガや病気の時だけじゃなく、こうやってなんでもない時でも、家族のように集まれる雰囲気を作りたかったから。
圭だって迷惑そうにしながら喜んでるし、それを知っているから、みんなこうやって暇さえあれば集まってくれる。
あたし達は、どんなに強力な磁石よりも引き合う力を持っているから。
何年経っても、変わらず傍に入れるって、すごく幸せなことだ。
あたしは、みんなの楽しそうな姿を見ながら微笑む圭に目を向けた。
圭もあたしの視線に気づきこちらを向くと、肩をすくめてさらに笑顔になる。