小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
あたしと同じ姿になった圭が、砂浜に足をとられよろけるあたしに声をかけ、余裕の表情で海水に向かって歩いて行く。
何だかすごく悔しくて、あたしは不安定な足をしっかり砂浜に吸いつかせながら、圭の背中に向かってベーっと舌を出した。
圭は波打ち際で立ち止り、水中でスムーズに泳ぐことのできるフィンを履く。
そこに弟の稔くんがやってきて、兄弟ふたりで何かを話しながら、圭と同じようにフィンを付けていた。
あのふたり、横顔までそっくりだ。
稔くんの方がまだ少し幼い顔立ちで、身長も圭より5センチほど低いけど、口元に手をあて笑う仕草や、笑った時に出来る鼻のスジがとても似ていた。
「歌恋! 良久!」
圭がクルリとこちらを向き、左手を口に当て右手を上げる。
いつになく楽しそうな圭。
白い砂浜が太陽の強い日差しを反射して、とても眩しい。
額に手を当て光りを遮って圭を見ても、やっぱり眩しかった。
だって、眩しい原因は太陽や白い砂浜じゃないもん。
圭の、無邪気な笑顔だ。
あんなに眩しい笑顔……どうやったって遮れない。