光のもとでⅠ
 まだ持て余しているつらい気持ちが伝わってくる。
 さっきのたとえ話。相手が秋斗さんだと怖いと思うけど、蒼兄が相手ならどうだろう……?
 私は最後の手紙が入っているかもしれないと思ったら、すぐにでも読みたいと思うのではないだろうか……。

 そのあとも、ずっと唯兄と並んで話をしていた。
 唯兄は私とお姉さんがどんな話をしていたのかを聞きたがったけれど、大した話はしたことがなかった。
 時間的にもいつも十分くらいなものだったし、話したことと言えば、お花のこととユイちゃんのこと。
 そのほかには病院って嫌だよね、っていわば患者同士の愚痴みたいなものばかりで、これといった内容はないのだ。
 それでも唯兄は口を挟むことなくじっと私の話を聞いていた。
 それが終わると、今度は唯兄が子どもの頃の話をしてくれた。
 お姉さんを優しく見守る唯兄のお話は、優しくて、あたたかくて、聞いてるこちらが幸せな気持ちになれた。
「リィ、眠いんだろ? 今日は学校にも行ったし……。もう十二時前だ、そろそろ休んだほうがいいんじゃない?」
 唯兄に諭されるものの、つないでいる右手を放してはいけない気がした。
< 1,000 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop