光のもとでⅠ
 クラスの人間やほかの人間にお菓子を配って歩くのは、きっと誰かに友チョコや義理チョコなるものを吹き込まれたからだとして、相当数のお菓子を作るとなれば、コンシェルジュが使うオーブンを借りたと想定するのが妥当。
 本を読みながらもらったお菓子を摘み、デスクの脇に畳んで置いたマフラーを時折眺める。そうこうしていると十一時になった。
 この時間なら風呂に入っていることもないだろう。
 リダイヤルから電話をかけると、
『もしもし……。ツカサ?』
「そう。マフラーのお礼が言いたくて」
『…………』
 どうしてそこで黙るんだか……。
「黙られると困るんだけど」
『あ、わ、ごめんっ……。あの、迷惑じゃなかった?』
 必要以上にこちらをうかがう訊き方。
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