光のもとでⅠ
「リィは別に資料のことは気にしなくていいよ? とくにやばいものはパソコンの中にしか入ってないから」
「……唯兄、ソファの裏側はダメ?」
「え?」という顔をして、ソファと窓の間の空間を見に行く。
「なるほどね。内緒話にはもってこいの場所だな。まるで秘密基地みたいじゃんか」
 言いながら、トレイを一度ローテーブルに置いた。
「ちょっと待っててね」
 リビングを出ていこうとした唯兄の手を掴む。
「どこに行くのっ!?」
 唯兄は振り返ると、くしゃり、と顔を崩して笑った。
「んな、捕まえなくったって大丈夫。羽毛布団取りに行くだけ」
「羽毛布団……?」
「この部屋、エアコンがきいてると少し寒いでしょ?」
 返ってきた答えに納得し、少し恥ずかしくなる。
 その恥ずかしさを紛らわせるために、
「私も制服着替えてくる……」
 と、一緒にリビングを出た。
 廊下で二手に分かれると、私はでき得る限りの速さで着替えを済ませ、リビングへ戻る。と、唯兄はラグの代わりにタオルケットを敷いていた。
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