光のもとでⅠ
「花、言葉……?」
「うん。中でもお姉さんが好きだったのは金木犀とカモミール。病院の敷地内に咲いてるお花って言ってた」
「――っ、リィ、見てもらいたいものがあるっ」
 唯兄はリビングから出ていくと、一分と経たないうちに戻ってきた。
 そして差し出されたのはオルゴールだった。
「この中に花が入ってて、ひとつは金木犀だと思うんだけど、もうひとつがわからなくて……」
 板をひとつ外すと木がむき出しになっているスペースに二種類のドライフラワーが入っていた。
「……金木犀とカモミール」
「もうひとつはカモミールだったんだ……」
 唯兄は嬉しそうに笑った。
 そして、はっとしたように私を見て、
「俺のこと気持ち悪くないっ!?」
 と、訊いてくる。
「……どうして?」
「だって、セリと俺って血のつながった兄妹だし――」
「……でも、人を好きになるのは簡単なことで難しいでしょう?」
「……え?」
 訊き返されて、自分が何を言いたかったのかちょっと悩んだ。
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