光のもとでⅠ
「いい加減、篭るのはやめろ」
 言ってはすぐに目を逸らす。
 本当はそんなことを言いたいわけでもないのに……。
 でも、いつもどおりといえばいつもどおりの自分で――。
 もしかしたら、この先は自分が変わらないと、今以上には翠に近づけないのかもしれない。
 もしくは翠が変わるか……。
 いや……翠には今のままでいてほしい。
 もう少し俺の中に踏み込んでほしいとも思う。でも、翠が人の中に踏み込む踏み込まないはリハビリしだいだと姉さんが言っていた。
 若槻さんのリハビリに乗じて、翠のリハビリにもなるであろう兄妹ごっこを始めたという話を聞いたのはつい先日のこと。
 ゲストルームから戻ってきた姉さんが教えてくれた。
 教えてくれたというよりは、人が勉強している部屋に入ってきてベッドに寝転がり、自分勝手に話したいことを話すだけ話していった、というのが正しいけど。
 姉さんはそれが俺への情報提供とでも思っているのだろう。
 なんだかんだ言いながらも姉っていうか……。
 別に姉さんが嫌いなわけではない。
 兄さんも姉さんも尊敬はしているし、人間的に俺よりも全然まともだと思う。
 ただ、素直になれない自分がいるだけ。
 ……やっぱり俺が変わるべきなのだろうか。
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