光のもとでⅠ
 今度はその手の本を読んでみようか……。兄さんに言えば何かしら本を出してくれるだろう。
 コーヒーを持って自室へ戻り、再度翠のバイタルに目をやる。
 なんら変化のない数値に安堵する。
 携帯はあってもなくてもさほど困らない。ただ、こんな機能が備わってしまうと手放せなくなりそうだ……。
 秋兄が片時も携帯を話さない理由はほかにもあるだろう。けれど、今はこの機能がついているから、と言っても過言ではないと思う。
 そう思えば俺も秋兄も、御園生さんとなんら変わりはないわけで……。
 気を取り直してルーズリーフを取り出す。
 さっき見ていた感じだと、翠は授業には出ていなくても教科書とノートさえあればなんとかなりそうな感じだった。
 出席日数はネックになるだろうけど、テストに響きそうなものはないように思える。
 古典と英語、世界史さえカバーできればいい。
 そこまで考えてため息をつく。
「これの逆が海斗だ……」
 ふたりとも足して二で割るとちょうどいいんじゃないか?
 どうせ教えるなら苦手科目がかぶってるほうが楽なんだが……。
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