光のもとでⅠ
「すぐに兄さんを呼ぶから」
 兄さんに電話をかけると二コールで出た。
『こんな時間にどうした?』
「俺、今ゲストルームにいるんだけど、翠を診てほしい。頭が痛いって泣いてる」
『わかった、すぐに行く』
 携帯を切り、翠に声をかける。
「大丈夫だから。兄さんがすぐに来る」
 翠は目を瞑ったままボロボロと涙を流す。
 眼精疲労と同じようなものだろうか。
 俺も頭が痛くなると目を開けられなくなる。そんなときはちょっとした光ですら脅威になり得る。
 思い立って翠の目に手をかざす。
 御園生さんがここにいないことを考えると、部屋で寝ているのかもしれない。
 呼びにいったほうがいいのだろう。けれども、兄さんが来るまでは側についていたい。
 表通路に人が通る気配がすると、すぐに玄関が開いた。
 兄さんが入ってくると、その音で目が覚めたのか、遅れて御園生さんもやってきた。
「翠葉ちゃん、頭はどんなふうに痛い?」
 兄さんが訊くと、翠は途切れ途切れに答えた。
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