光のもとでⅠ
 ここ最近の翠の生活を考えれば眼精疲労はあり得ないだろう。だとしたら、考えられるのは片頭痛……。
「わかった。少しうつ伏せになれるかな?」
 翠が体勢を変えると、兄さんは触診を始めた。
 身体に触れて少しすると、
「力抜けるかな?」
 兄さんが声をかけても状態は変わることはないようだ。
「司、姉さんの家に輸液と筋弛緩剤のアンプルある?」
「輸液と点滴セット一式はある。筋弛緩剤は見てみないとわからない」
「じゃ、そっちは俺が行くから司は翠葉ちゃんの首元のマッサージ頼める? それからアイスノンは取って」
「了解」
「蒼樹くんは蒸しタオル作って翠葉ちゃんの目に乗せてあげて」
 指示を出すと、兄さんはすぐに部屋を出ていった。
「翠、首元――マッサージするから触れる」
 首といえば、つい数時間前のやり取りがある。
 不用意に触れていいものかは躊躇われた。
 が、そんなことを気にしていられないくらいにひどい頭痛らしく、翠はコクリと頷いた。
< 1,069 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop