光のもとでⅠ
 首筋の筋肉に触れると、あり得ないほど張っていた。
「どうしたらこんな硬くなるんだか……」
 零しつつ、凝りをほぐそうと力を入れると、
「痛いっっっ」
「少し我慢しろ」
 これだけ張っていれば痛くもなるだろう。
 でも、これをほぐさないことにはどうにもならない。
 筋弛緩剤を入れたとしてもそれが効くのは一時のことだ。
 ……あまり力を入れて揉んでも苦痛なだけか――。
 少し力を緩め、痛がる寸でのところでやめる。
 何度か繰り返すうちに、ようやく加減がわかってきた。
 マッサージで大切なのはツボはもちろんのこと、力加減にも重きを置く。
 人によって肉や筋肉の付き方は異なる。それによって力の加減を変える。
 それは兄さんと姉さんの違いでわかってはいたけれど、翠は姉さんよりはるかに筋肉がついていないし肉も薄い。
 力加減には最大の注意を要す。
 兄さんが戻ってくると、すぐに場所を譲った。
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