光のもとでⅠ
 うつ伏せになっていた翠も仰向けになる。
「翠葉ちゃん、点滴を入れるのにどうしても電気を点けなくちゃいけない。蒸しタオルを目の上に置くから少しの間電気点けさせてね」
 確認したうえで、御園生さんが手にしていた蒸しタオルを顔に乗せた。
 点滴の準備をしている兄さんが、
「司、どんな具合?」
「あり得ないほど硬い」
「やっぱりねぇ……。今から点滴で筋弛緩剤って筋肉を弛緩させる薬を入れるから、五分から十分くらいで楽になると思う。もう少しの我慢だからね」
 翠に声をかけると消毒を始めた。
 兄さんが何気なく手にした消毒薬に目を瞠る。
 ヘキシジン……?
 消毒にアルコールも使えないのか?
 ――そういえば先日、栞さんがアルコール負耐症と言っていたか……。
 血管に針が入り、ラインを紙テープで固定すると、腕時計を見ながら滴下速度を調整する。
 この速度なら二時間半ってところだろう。
 処置が終わるとすぐに照明を消した。
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