光のもとでⅠ
「痛み……引いてきたみたいです」
 点滴を始めて十分くらいで翠が口にした。
 俺はマッサージをやめて兄さんに場所を譲る。と、
「そう。良かった……でもね、長くはもたないんだ」
 兄さんは申し訳なさそうに口にした。
 通常、薬がどのくらいもつかなんて患者に話さない。けれど、あえて話すのには理由があるのだろう。
「翠葉ちゃんも知っている言葉でいうなら、これは対症療法に過ぎない。一時的に痛みが和らいでもまた痛くなる可能性はある。そしたら、普段翠葉ちゃんが使っている筋弛緩剤を飲めば今くらいには楽になる」
「……痛みが起きなくなるのには何か方法はないんですか?」
「そうだな……今の所見からなら肩や頭のコリをほぐせば頭痛の回数は抑えられるかもしれない。ほら、入院中にストレッチ教えてあげたでしょう? あぁいうの、今できてるかな?」
「いえ……」
「そうだよね。体起こすのも難しいって聞いてたし……。あぁいうストレッチを定期的にして肩回りや首回りをほぐしてあげるのが一番かな。あとは今司がやったようなマッサージを受けてコリをほぐす方法もある。ほかには予防的に薬を服用する方法もあるけれど、今の投薬量に増やすのはちょっと気が引けるかな……。頭痛が頻繁に起こるわけじゃないなら少し様子を見よう?」
 自分の名前がでてようやく口を開く。
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