光のもとでⅠ
 数分すると、バスルームからラベンダーの香りがしてきた。
 きっと、バブルバスがラベンダーの香料なのだろう。
 そんなことを考えつつ、身に纏っていたものをすべて脱ぎバスタブに浸かる。
「見事に泡だらけだな」
 バスタイムをこよなく愛す彼女なら、こういったアイテムも好きかもしれない。
 翠葉ちゃん……昨日、俺が帰ったあとに何があった?
 十二時ごろから彼女の血圧が一気に上がり、見たこともない数値に達していた。そして二時過ぎには楓からの電話。
 対応したのは間違いなく楓なのだろう。
 でも――彼女の不調に蒼樹が気づいたとして、まず助けを求めるのは湊ちゃんか栞ちゃんのはずだ。
 先に栞ちゃんを呼んだ? 栞ちゃんに対処できず湊ちゃんに連絡を取ったがいなかった……。
 いや、蒼樹がそんな手間のかかることをするとは思えない。連絡をするなら最初から湊ちゃんだろう。そうでなければ病院へ運ぶはず。
 それがどうして楓……。
 第一選択に楓を選ぶのはひとりしかいない。司だ――。
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