光のもとでⅠ
 家族からの着信を知らせる着信音が鳴り始めた。
「お母様かしら?」
 ディスプレイを確認し、違和感を覚えながら応答した。
「楓から電話なんて珍しい。どうしたの? 今日もヘルプに来いって話なら遠慮するわよ?」
『秋斗がホテルで倒れた。今、静さんから連絡が入ったとこ』
「っ……!? ちょっと待ってっ、私、ついさっき電話で話したばかりよっ!?」
『その電話のあとに倒れたらしい。結構な分量吐血しててこれから病院に搬送されてくる』
「……胃潰瘍か十二指腸潰瘍ね」
『俺、今から病院に行くから姉さんのほうから病院に連絡入れてほしい。場合によっては輸血が必要になるかも。院内血ってことはないと思うけど、司と連絡がつくようにしておいて』
「わかったわ」
 いつもは落ち着いている楓がかなり慌てていた。
 静さんが取り乱して連絡を入れてくることはないだろうから、状況を聞いてかなり良くないと判断したわけね。
 固定電話の短縮ボタンを押し病院へ連絡を入れる。
「学校医の湊よ」
『お疲れ様です』
「すでに搬送要請は入っているかと思うけど、秋斗が運ばれてくる。オペ中でなければ父に連絡を取って診てもらえるように伝えてもらえるかしら? それからRHマイナスABの輸血パックを緊急確保。無理なら司を連れていく」
『少々お待ちください。――搬送要請を確認いたしました。藤宮涼医師に連絡を入れます』
「お願いね」
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