光のもとでⅠ
『……わかった。連絡のつくところにいる。しばらくは生徒会で図書棟。そのあと、部活には出ずにマンションへ戻る。翠のマッサージあるし、夕飯をゲストルームで食べたら姉さんの家に帰る予定。……もしなんなら今から病院に行くけど?』
「まだいいわ。それから、このこと翠葉には――」
『わかってる。でも、それなら栞さんと海斗にも言わないほうがいいと思う』
「そうね、栞は顔に出るし、海斗は口を滑らせる。今のところ、極秘扱いよ」
『了解』
 必要なことを話すと電話は切られた。
 藤宮の人間には稀にRHマイナスが生まれることがあり、秋斗と司はその中でもとくに稀と言われるRHマイナスABだ。
 血液バンクにはあらかじめ用意されているはずだが、それでも万が一、ということはある。
 ふたりには十六歳を過ぎてからずっと献血をさせてきた。だからこそ、こんなときには輸血パックが問題なく届くと信じたい。
 けれど、司と秋斗が同じ血液型で良かった。
 あとはお父様がどうにかしてくれるはず……。
 お父様に連絡が入れば必然的に紫さんにも連絡がいくだろう。
 すぐにでも駆けつけたいところだけれど、あと二十分で職員会議が始まる。
 それが終わったら病院へ行こう。
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