光のもとでⅠ
 秋兄と俺の血液はRHマイナスAB型という特殊な血液で、在庫状態が常に不安定な血液でもある。
 だからといって、その血を身内を使ったから身内が補充するというのはおかしな話で、そんなことをする必要はないのだが、俺が病院へ行くのには十分な理由になった。
 カツンカツンカツン、とヒールの足音が規則正しく聞こえてくると、渡り廊下から姉が姿を現した。
「翠の傷、どうだった?」
「あんたが昨日見たのとそう変わらないでしょ。それより、あの子どこで寝てたと思う?」
 面白そうに話すところを見ると、自室にはいなかったのだろう。
「さぁ……。ただ、自室じゃなかったとしたら御園生さんのとこしかないんじゃない?」
 答えなど考える必要もない。
「……つまんない。当たりよ、当たり」
 姉さんは非常に不服そうな顔をした。
 そんな顔をされても困る。
 答えなんて一秒とかからずに出ていた。考える行為自体が無駄。
「おまけに手首に鈴つけてんの。あれ、手が動いたら蒼樹が気づくように、よね」
 どこまでも過保護……。
「過保護が翠葉を育てたのか、翠葉が周りを過保護にしたのか。今となっちゃ卵が先かニワトリが先かって話よ」
 そこまで話すとエンジンをかけ、若干荒い運転で車が走り出す。
 ……やっぱりこの車、姉さんには合ってないと思う。
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