光のもとでⅠ
 学校までの道のり、そして学園内環状道路を通り、藤山の私有地。
 見慣れた風景を見ながら思う。
 どっちが先でもかまわないじゃないか、と。
 周りと自分が思っていることに少しズレがあることに最近気づいた。
 確かに翠は知っているべきことを知らなさ過ぎると思うこともある。
 けれど、別に知らなければ教えればいい。ただそれだけのことではないのか、と思う。
 俺の周りは翠が変わることを期待しているように思えてならない。
 どうしてそのままの翠じゃいけない?
 周りが少し合わせるという方法だってあるし、翠が周りに慣れる時間を一緒に過ごせばいい。
 俺の周りはまるで翠を急かすかのように、翠の変化を願っている気がした。
 俺は――別に今のままでも困らないんだけど……。
 翠は翠で、変わらなくちゃいけないと催眠にでもかかっているかの如くだし。
 焦って手に入れたものは脆くも崩れる。
 翠はそれを知っているのだろうか。
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