光のもとでⅠ
「もう一度射形見せて」
「うん、悪いけどちょっと見てよ」
 と、すぐに腹式呼吸に入るあたり、堂に入っているとは思う。
 左右のバランス、縦横十文字も悪くはない。
 一連の動作を見ていて気づいたことと言えば……。
「ケン、マッサージやってる?」
「は? やってないけど」
「ちょっと弓置いてこっちに来い」
 あれは多分、重心に問題がある以前の問題だ。
 バスケをやってきているから脚力に問題があるとは思えない。
 マットの上に座らせ、腰から足にかけての筋肉に触れる。
「……やりすぎ」
 一言もらすと、「は?」と寝とぼけた顔をしている。
「腰から足にかけて筋肉が張ってる。これじゃ重心がうまく取れなくてもおかしくない。離れのとき、腰が浮いてる」
「あ、それはなんとなく気づいてた。でも、下半身は結構走りこみもしてるし――」
「だから、無暗やたらとやりすぎ。今日、放課後に整体行ってくれば? 明日には的に当たるんじゃない」
 そう言うと、自分の足を手で触り始めた。
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