光のもとでⅠ
「ケンに吐いたら学校中の噂になる……」
「ひでぇ言いようだなぁ……。ま、間違いはないけどな」
 と、ニィ、と口角を上げて笑った。
 弓を置いて道場に一礼し、戸を閉めようとしたとき、
「でもさ、本当にっ! 何かあったときは言えよな? 俺だってそんなときくらいはお口チャックできるんだぃっ!」
 どうしてか腰に手を当てて威張って言う。
 それに軽く手を上げて答え、道場をあとにした。

「ありがとう」の一言でも言えばいいのだろう。
 けど、俺という人間は気を許せば許すほどにそういうことを口にしなくなるらしい。
 ケンといつから話すようになったかと訊かれたら、俺は間違いなく高等部に上がってからと答える。
 ケンが弓道部に入ってこなければ、こんなふうに話すこともなかったはずだ。
 朝陽とも中等部で生徒会が一緒にならなければ言葉を交わす仲ではなかった。
 ふたりとは幼稚舎から一緒だが、これといった会話をした記憶はない。
 ただ、ふたりは三人で写っている写真を持ち出しては幼馴染だと豪語する。
 ただ同じクラスになったことがある。それだけで幼馴染というふたりが理解できない。
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