光のもとでⅠ
 心労は相当なものだったと考えるべきだろう。
 だから、心配だった……。
 その心労の原因もわからなくはなかったし。
 正直、面白くないことは山ほどある。
 初めて好きになった人間が秋兄を好きだということ。
 両思いのくせにどうしてかうまくいってないこと。
 そのうえ、両者体調を崩すは自傷行為に走るは、なんだって言うんだ……。
 秋兄は年上なんだからもっとうまく立ち回れよな。
 翠は今のままでいいんだからそんなに焦るな。
 どうしてこんなに簡単なことがうまくいかない?
 いや、決してうまくいってほしいわけでもない。
 けど、翠が泣くのも、秋兄が病人っていうのもなんかやなんだ……。
 どっちも、俺が嫌なんだ。
 ふたりとも大切で、片方に恋愛感情を持ってるのって、意外ときついものだな。
「わっっっ!」
「っ……!?」
 突然の声に心臓が止まるかと思った。
「ふふ、びっくりしたでしょう?」
 振り返ると茜先輩がいた。
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