光のもとでⅠ
「違います。翠なら明日から登校してくるでしょう。ただ、一時間置きに身体を休ませながらになるでしょうけど」
 茜先輩は止めていた息を吐き出し、「良かった」とほっとした顔をした。
「茜先輩はかなり翠がお気に入りみたいですね」
「それはもうっ! ずっと探していた子だもの」
 ずっと……?
「私が初等部六年生のときに出たコンクールのピアノ部門に翠葉ちゃん出てたのよ」
 ピアノコンクール……?
「見事入賞したのに後日の総合授賞式には出席しなかったため、二位だった子が繰り上げで授賞式に出たの。そのときはなんとも思わなかった。ただ、すごく感情表現豊かなピアノを弾く子、としか思わなかったの。でも、声楽を本気でやり始めたら伴奏者に対する不満がどんどん膨らんでいって、そんなときに思い出したのが彼女の音だった。でも、彼女はそれいらいコンクールには一度も出てきていなくて、名前を調べる資料すら残っていなかったのよ。で、先日のお披露目パーティーで無事発掘! 見つけちゃったんだな」
 と、笑った顔は男が軒並み釣れそうな笑顔だった。
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