光のもとでⅠ

10 Side Tsukasa 04話

 午後になり病院へと戻る。
 病院へ入る際には一度携帯の電源を落とし、十階に着くと再度電源を入れる。
 藤宮病院の十階は藤宮の親族以外が使うことはそうそうない。
 全部で五部屋あり、そのほかにはカンファレンスルームや簡易キッチン、警備員待機室、ナースセンター、手術室と処置室があるのみ。
 この五つの部屋のうち特別なのは会長専用室と祖母が使っていた病室の二部屋。
 内装はさして変わらないものの、調度品が数段良いものを設えられている。
 五つの病室では医療器材に悪影響がなければインターネットも携帯の使用も認められているのだ。
 そして今、秋兄は会長専用室と呼ばれる一番広い部屋を使っている。
 ドアをノックして中に入ると、父さんと姉さん、兄さんも揃っていた。
ベッドの上には相変わらず不機嫌そうな顔をした秋兄。
 少々疲れて見えるのは気のせいではないだろう。
 手元の電源を入れると、直後に携帯が鳴り出した。
 ディスプレイを見るも、名前が表示されない。が、この番号のつづりには覚えがあった。
 柏木高志――早くもコンタクトを取ってきたか。
 しかも、父さんにではなくこの俺に。
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