光のもとでⅠ
 だいたいにして、兄さんがそういう態度をとったのはあんたの娘が非常識な行動をとっていたからだということを認知していなさすぎじゃないか?
 それをさも楽しそうに応対するのが父さんだ。
「その件と本日のこの電話と、何か関係がございましたでしょうか?」
『んっ、それはだなっ――』
「柏木さん、御社にとってうちが一病院でしかないように、うちの病院にとっても御社は一製薬会社でしかないのですよ。今回はお互いがことを荒立てないためにと取った処置かとこちらは思っていたのですが、そうでないとすると、夏休みに息子の貴重な時間を割く必要性がなくなります。いかがなさいますか? うちはどちらでもかまいませんが。それと、本日は何用で当院へいらしていたのでしょう。できれば詳しくお話をうかがいしたいのですが」
 なんだ……俺が知らせるまでもなかったのか。
 でも、その間父さんは手術室にいたわけで……。
「なんでも医局長にご用だったとか?」
 と、父さんは獲物を追い詰めるかの如く話を進めていく。
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