光のもとでⅠ
 その静さんと仕事上では同等に渡り合っていると親戚中で注目されているのが現在ベッドの上にいる人間、秋兄だ。
 相変わらずふくれっ面というか、不機嫌そうだ。
「何、まだオムツと尿カテに拘ってるわけ?」
 訊くと、図星だったようで、
「尿カテだってやだし、内視鏡なんて二度とやらないっ」
 と言いだす。
 秋兄何歳だよ……。
「非常に残念なお知らせがある。秋斗は退院前に再度胃カメラコースだ」
 父さんが口を開くと、秋兄はフリーズした。
「あのさ、朝も言ったけど……尿カテにオムツなんて珍しいことじゃないから。秋兄なんて二、三日で取れるんだから我慢しろ。さらにはその内視鏡、翠だって受けてるよ。翠はきっと嫌でも泣き言はもらさないんじゃない?」
 どうやら最後の一言が効いたらしい。秋兄はむっつりと口を噤んだ。
 秋兄をやり込めたのは初めてかもしれない。
 そんなことを考えていれば、
「司も言うようになったな」
 などと、父さんにまじまじと見られ、ベッドサイドではお腹を抱えて笑ってる人間がふたり……。
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