光のもとでⅠ
「久しぶりです」
 ポーカーフェイスを貼り付け必死に搾り出した一声。
 声は震えもせず、自然な笑顔だって添えられたはず。
「久しぶり」
 返ってきた声は私の大好きな落ち着いた声で、いつ見ても変わらない端整な顔。
 そして、「立花さんもね」と飛鳥にも声をかけた。
 あ、そっか……。佐野は朝練で指導してもらうことがあると言っていたし、海斗とはここで会っているのだろう。
 それにしても、何度か私服姿を見ているけれど、この人はダーク系の色をあまり着ない。
 考えてみれば翠葉もそうかしら……?
 今日の蒼樹さんは白いコットンのシャツにジーパン。シャツの中にはちらっと茶色のインナーが見える。
 翠葉はベージュのリネンワンピースを着ていた。
 蒼樹さんはTシャツよりも普通のシャツを着ていることのほうが多い気がする。
 スーツ姿はさぞ格好いいだろう。和服も似合うかもしれない。
 そんなことを考えていると、着々と翠葉と蒼樹さんの間では会話が進められていた。
 私は周りにつられるようにして立ち上がる。
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