光のもとでⅠ
 駐車場に着くと、佐野にこっそり耳打ちをした。
 ふたりにしか聞こえない声で、
「後ろに乗りなさい。先に飛鳥を送ってもらうから。そしたら飛鳥の隣だし、飛鳥の家もわかるでしょう? 私は道案内で蒼樹さんと話すから、佐野は飛鳥と話せばいいわ」
 ちょっと意地悪く笑ってみせる。
 だって、今日の相談内容って佐野にとってみたら結構酷なものだったと思うもの。
 このくらいの褒美があってしかるべきだと思うわ。
 佐野はびっくりしたような顔をしたけれど、ただ一度、コクリと頷いて見せた。
 助手席に乗り込み、
「蒼樹さん、まずは飛鳥の家からでいいですか?」
 と、声をかける。
「バス停のほうが近くない?」
「えぇ、近いですね。でも、いいんです」
 にこりと笑みを添えて答える。
 後部座席におさまった飛鳥も、「なんで?」という顔をしている。
「飛鳥、今日は家庭教師の日でしょう? 早く帰らないとおば様に怒られるわよ? 宿題終わっているの?」
「いっけなーいっ! 忘れてたっ」
 と、途端に焦り出す。
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