光のもとでⅠ
 顔を上げると、さっきの状態のままで蒼樹さんが私を見ていた。
「蒼樹さんっ、からかうのもいい加減にしてくださいっ」
 冷静になんてなりようがなかった。
「ごめん……からかってるつもりは全くないんだ。もっと時間をかけてお互いを知ってから打ち明けるつもりだったけど……俺はたぶん、簾条さんに惹かれてる」
 からかって、ない……?
 惹かれてるって、私に……?
「だから、相手役を選ぶとしたら、君以外には考えられなかった」
 もう、嘘でも勘違いでもなんでもいい――。
 そんなこと言った蒼樹さんが悪いのよ……。
 桃華、これは取引だと思えばいいのよ。
 そう、いつも学校でやっていることとさして変わりはないわ。
「わかりました、引き受けます。その代わり、こちらも引き受けてもらいますからね」
 そう口にして顔を上げ、にこりと笑顔を作った。
「来週の日曜日、ちょっとしたパーティーに出なくてはいけなくて、でも、私はそれに出席したくないんです」
 首を傾げる蒼樹さんは翠葉と本当にそっくりだ。
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