光のもとでⅠ
 家の前までくると、
「ところで、これって翠葉に言ってもいいこと?」
 訊かれて少し考えた。
 隠すわけじゃない。でも――。
「あの子、今はそれどころじゃないから少し待ちましょう?」
「じゃ、言うタイミングは桃華に任せるよ」
「わかりました」
 一礼して通用口から中へ入る。
 ドアを閉め、それを背に胸に手を添えた。
「今になってドキドキしてきた……」
 どうしよう、彼氏ができた……。
 しかも、一目惚れに近かった人と……。
 翠葉のお兄さん、八歳も年上の人。
 少しだけ翠葉の悩みがわかったかもしれない。
「桃華」って呼ばれるだけで、こんなにドキドキするとは思わなかった――。
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