光のもとでⅠ
 翠葉、年の差なんて関係ないよ。
 惹かれるものは惹かれる。
 会った時間が少なかろうと多かろうと、惹かれることにはさほど問題ないのかもしれない。
 今日の夜、そんなことを話せたらいいな……。
「ところで、これって翠葉に言ってもいいこと?」
「あの子、今はそれどころじゃないから少し待ちましょう?」
 それもそうか……。
「じゃ、言うタイミングは桃華に任せるよ」
「わかりました」

 相変わらず大きな門構えの前で彼女を降ろすと、軽くお辞儀をして通用口から敷地内へと入っていった。
 車を発進させつつ、
「華道の家元、十五歳の彼女にお見合い話ね……」
 藤宮よりも堅いんじゃないか?
 それより、彼女はひとりっ子なのだろうか。
 花婿候補とは、要は婿入りするということになるような気がする。
 それを頑なに拒む彼女は俺を引っ張り出すことに決めたらしい。
 なんだか俺よりも大変な境遇にいるんじゃないだろうか。
 でも、おかげで意志の疎通ができたわけだけど……。
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