光のもとでⅠ
 震える指で通話ボタンを押すと、
『今日、蒼樹の帰り遅い?』
「……は?」
『今日の帰りは遅いのか早いのかって訊いてんのよっ』
「とりあえず、あと二時間もしたら帰れるかと思います」
 図書館で資料を少し物色してから帰るつもりだった。
『それ、なんとかならない?』
「翠葉がどうかしましたか?」
『翠葉、というよりは若槻かしらね……。若槻の探し物、妹の形見のオルゴールを翠葉が持ってたのよ』
 意味がよくわからない……。
「形見のオルゴールって……?」
 オルゴールと言われても、翠葉はたくさんオルゴールを持っているし――。
「あ……」
 曰くありげなものはひとつしかない。
 音の鳴らないオルゴールがひとつ――。
 けど、それと唯がなんだって……?
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