光のもとでⅠ
『オルゴールは栞が幸倉からこっちに持ってくる。若槻に渡すタイミングは翠葉任せだけど、正直、若槻がどういう行動に出るのかが読めない。だから、マンションに戻ってて欲しいんだけど……。私もできるだけ早くに戻るから。今、秋斗の病室でしょう? 詳細は秋斗から聞いて。私はこれから定例会議」
「わかりました」
 今日はいったいどんな厄日なんだか……。
「翠葉ちゃんどうかしたのか?」
 秋斗先輩が眉根を寄せて訊いてくる。
「翠葉が、というよりは唯が、らしいです」
「オルゴールってもしかして――」
 俺はコクリと頷いた。
「どんな因果かは知りませんが、翠葉が持っているオルゴールのひとつが唯の探しているオルゴールらしいです。で? そのオルゴールっていったいなんなんですか? 湊さんは形見だとかって言ってましたけど……」
 先輩は大きなため息をつくと、
「いったいどんな巡り合わせだよ」
 と、ぼやいた。
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