光のもとでⅠ
「オルゴールはさ、若槻の一番触れたらまずい核心部分なんだ」
「……そうみたいですね。どうしてそんなものを翠葉が持ってるかなぁ……」
 頭を抱えずにはいられなかった。
「あとで湊ちゃんに頭下げないとな……。本来は俺がすべきことだけど、各方面に連絡を入れてくれたんだろうから」
 言いながら携帯に目をやると、
「栞ちゃんはともかく、蔵元に連絡を入れてさらには静さん――でも、今日じゃ無理か」
「え?」
「今日、六月十四日は静さんの産みの親、静香さんの命日なんだ。この日は決まって雲隠れだ。一族皆暗黙の了解の日」
 ……本当、今日ってどんな厄日?
「とにかく、今日はこれで帰ります。先輩、くれぐれも病院を抜け出したりしないでくださいよ? メールもらえればすぐに資料は揃えますから。……といっても、しうばらくは唯のサポートですが」
 そう言って一度電源を切って部屋を出ようとしたら、
「蒼樹っ、俺がここにいることを知ってる人間は少ないっ。司の家族と蔵元と唯、それだけだから」
 栞さんや海斗くんにも内緒、か。
 つまりは翠葉にどうしても知られたくないってことかな。
「わかっています」
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