光のもとでⅠ
 横になっているときはまだいいようだけれど、夏でも末端冷え性の症状は改善されないのだとか……。
 本当にどれだけ気をつけて生活すればいいんだか。
 それはセリも変わらなかったな……。
 どんなに気をつけていても発作は起きるし、迫りくる死は避けられないものとして受け入れざるを得なかった。
 けれど、その迫り来る死を待たずしてこの世からいなくなってしまったわけだけど……。
 放された手を今度は自分から握った。
 人の体温が恋しくて。
 セリとそう変わらない白くて華奢な手。
 ついセリと重ねてしまいそうになる。
 今、少しだけならそれも許されるだろうか。
 一年は三百六十五日で三年で千九十五日。一日は二十四時間だから、二万六千二百八十時間。でもって一時間は六十分だから――。
 だめだ、そこまで数える忍耐力は持ち合わせていない。
 俺の忍耐力をかんがみて三年止まりの千九十五秒。
 いや、延々と数を数えてオルゴールと向き合うのを先延ばしにしたいのは山々なんだけど、それじゃ意味がないし……。
 期限があることに意味があるのだとしたら、千九十五秒がいいところ。
 リィの手にセリを重ねつつ、目を瞑って数を数え始めた。
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