光のもとでⅠ
 ちょっと待ってくれ――。
 なんだよ、この手紙……。
 俺がこっそり見舞いに行っていたのも、そのたびにキスをしていたことも、全部知っていた……?
 それ以前に――。
「俺を好きって、なんだよ……」
 最後に書かれていた日付は、事故の約二週間前の日付だった。
 こんな手紙書くくらいなら俺に言えよっ。
 そしたら、両親の車なんかに乗せやしなかったのに。
 俺が――俺が最後のその瞬間まで側についていたのにっ。
 どうにもやりきれない思いに立ち上がり部屋を出た。
 ゲストルームを、というよりはマンションを出るつもりで廊下に出ると、廊下で資料整理をしている人がいた。
 こっちは見ずに、
「翠葉を置いていくのか?」
 それに答えられずにいると、
「翠葉を起こさずに部屋から出てこれたことは褒めてやる。でも、目が覚めたときに唯がいなかったら、翠葉は泣くだろうな……」
 あんちゃんは相変わらず資料を整理しながら言葉を続ける。
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