光のもとでⅠ
「俺、最初に言ったよな? 翠葉を泣かすなって」
 そこまで言って、ようやく俺に視線を向けた。
 立っているのは俺で、俺のほうが高い位置にいるにも関わらず、下から見上げてくる視線はひどく威圧的なものだった。
「……オルゴール、開けたんだな」
 あんちゃんの視線が俺の右手に移っていた。
 俺の右手には読んだばかりの手紙が握りしめられており、力任せに握りしめているだけに、どこか破れているかもしれなかった。
「今はさ、何か話したいんじゃないのか?」
 ……話したい? まさか……。
 こんな話、できるわけがない――。
 目の前にいるこの人は確かにシスコンだ。
 重度のシスコンだし、本人もそれを認めている。
 でも、俺のそれとこの人のそれは意味合いが異なる。
 こんな話、二十二年間生きてきて誰にもしたことがない。
 秋斗さんや蔵元さんにだって話していない。
 ほかに話せるような人間は存在しなかった。
 それをつい最近知り合ったばかりのこの人に話す……?
 笑わせるな――無理に決まってる。
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