光のもとでⅠ
 もう一時を軽く回っている。消灯時間もとっくに過ぎている。が、あの人が寝ているはずもないだろう。
 そう、ヘルプ先は秋斗さん。
 コール音が鳴ると三コール目で出た。
『若槻、大丈夫か?』
「ご心配をおかけして大変申し訳ございません。……えぇと、助けてください……」
『……何が起ってるのか、俺さっぱりわからないんだけど……。オルゴールが見つかったってことしか聞いてないし』
「えぇ、あんちゃんに色々相談していたところなんですが、世間一般の答えが一個も返ってこなくてうろたえているところです」
『ほぉ……俺には話せなくても蒼樹には話したわけか。いい度胸だな……』
 嫌な空気を感じつつ、今度はヘルプ先を間違えた気がしてくる。
『けど、蒼樹は蒼樹の考えがある。普通の考えを聞きたいなら蔵元じゃないか?』
 言われて納得した。
 蔵元さんからは型にはまった答えしか返ってきそうにはない。
『けどさ、俺にも話せない内容を蔵元に話すことができたか?』
 あ……。そっか……。
 俺があんちゃんに話をすることができたのは、何かほかと違うと思ったからだ……。
 なーんだ、そういうことか。
 俺は普通の答えを求めていたわけじゃないんだ。
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